
とはいえ、誰しもが年を重ねるにつれて、身体のさまざまな部分に変化が現れてきます。
特に45歳を過ぎると、歯を失う人の割合が著しく増加するようです。
一般的に、健康な人の親知らずを除いた歯の本数は28本とされていますが、45歳以降になると、28本を下回ることが多くなり、入れ歯を使用する人が増えてきます。
なんと、75歳を超えた後期高齢者では、およそ3人に1人が総入れ歯を使用しているというデータもあります。
参考URL:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-04-001.html
ご存じの通り、永久歯は一度失ってしまうと再生することはありません。
そのため、失った歯の代わりに入れ歯を使用することになりますが、入れ歯を利用することによってさまざまな悩みを抱える人が少なくありません。
特に多い悩みの一つは「入れ歯がズレたりガタつく、外れてしまう」といったことです。
そんな時に役立つのが、入れ歯を歯茎にしっかりと密着させ、安定感を高めてくれる商品群です。
それが「ポリグリップ」や「タフグリップ」といった商品名で知られる入れ歯安定剤です。
入れ歯安定剤を使うメリット
優れた技術を持つ歯科技工士が丁寧に作った入れ歯でも、腕のいい歯科医に何度も調整してもらったとしても、入れ歯の違和感が解消されずに困っている方は意外に多いものです。
そのため、ちょっとしたことで入れ歯が外れたり、歯茎が痛むといった悩みが生じてしまいます。
また、入れ歯と歯茎の間に食べ物が挟まって痛むため、食事を楽しむことができないと感じている人も非常に多いです。
しかし、入れ歯安定剤を使用することで、これらの問題が緩和されることが期待できます。
入れ歯が安定することで、固い食べ物もしっかりと噛むことができ、入れ歯と歯茎の間に食べかすが入りにくくなるため、口臭対策にも効果的です。
入れ歯安定剤を使うことによって、違和感や不具合を軽減することができるのです。
入れ歯安定剤の種類
入れ歯の土台となる床(しょう)は、歯茎や口蓋などの粘膜に直接触れるため、入れ歯を作る際に最も重要な部分です。
一般的な入れ歯の床は、主に以下の素材でできています。
- プラスチック~主にレジンという合成樹脂
- 金属~金合金・チタン・コバルトクロム・白金合金など
大多数の人が使用している入れ歯は、プラスチック(レジン)のみで作られたものか、プラスチックと金属の組み合わせで作られたものです。
そのため、入れ歯の材質や種類に応じた安定剤を選ぶ必要があります。
ただし、入れ歯が直接触れる部分が荒れていたり、痛み、傷、腫れなどの症状がある場合は使用できませんので十分に注意が必要です。
市販されている安定剤には、次の4種類があります。
クリームタイプ
このタイプの安定剤は、伸びが良く粘着力も強いので、総入れ歯に使用しても外れにくいのが特徴です。
また、金属が使用された入れ歯(いわゆる金属床)との相性も良く、プラスチックと金属の両方に使用可能です。
ただし、つけすぎると噛んだ際に安定剤がはみ出てくるため、少なめに使用することをお勧めします。
このタイプは粘着力が強いため、入れ歯以外の部分にクリームが付着すると取り除くのが難しく、洗浄の際にも手間がかかることがあります。
さらに、唾液や温かい飲み物で安定剤が溶けやすく、口の中がネバネバしたり、食べ物の味が変わると感じる方も多いようです。
クッションタイプ
名の通りクッション性に優れており、噛んだ時に痛みを感じる方や入れ歯と歯茎の間に隙間ができている方に特に適しています。
プラスチック床(レジン床)との相性が良く、床と同じピンク色や透明のものもあります。
はみ出しても目立たず、熱いお茶などを飲んでも溶け出すことがないため、ベタベタせず、剥がしやすいですので入れ歯の床に残りません。
また、入れ歯に安定剤をつけたまま水洗いできるので、衛生的であり、2〜3日間続けての使用も可能です。
しかし、使い心地が良い反面、弊害も生じやすいのがこのタイプの特徴です。
長期間使用することで、最終的に入れ歯が合わなくなったり、新しい入れ歯に慣れるまでの期間が長くなる可能性があります。
パウダータイプ
パウダーを薄く伸ばして使用することで、食べ物を噛んだ際の食感に違和感が少なく、本来の噛みごたえを楽しむことができます。
ただし、クリームタイプに比べて粘着力が弱く、大声で話したりくしゃみをする際に外れやすく、粉末状なので付ける時に周囲に飛び散りやすいという欠点があります。
また、外れやすさを補うために量を増やすと、口の中の水分が奪われ、乾燥を招くため注意が必要です。
シートタイプ
シートタイプは、特に入れ歯のガタつきが気になる方におすすめです。
小さくカットして使用できるため、入れ歯の具合に応じて適量を使うことが可能です。
しかし、このタイプは粘着力や安定性、持続力において、クリームタイプやクッションタイプには劣ります。
シートタイプは部分入れ歯用と総入れ歯用に分かれているため、購入時にはよく確認することが重要です。
入れ歯安定剤のデメリットや副作用

クッションタイプの安定剤は、入れ歯の内側にクッションのような厚みを持たせることで、痛みなどの症状を軽減します。
しかし、使用する際に毎回均一に塗ることが難しいため、咬み合わせが悪くなることがあります。
咬み合わせの悪さを補うために、さらに安定剤の弾力や粘着力に頼ることになるのです。
咬み合わせが悪い状態が続くと、無意識に噛む力が強くなり、歯茎の部分に痛みを伴わない炎症が起こることがあります。
しかし、クッション性の高い安定剤を使っていると咬み合わせの悪さに気づかないことも多く、そのまま使用を続けてしまうことが多いです。
この状態を放置すると、あごの骨が薄くなったり、歯茎が痩せてしまい、最終的には入れ歯を使用することが困難になる事態を招く可能性があります。
入れ歯安定剤は、入れ歯の安定を目的とした製品が多く、密着力や粘着力が強いものが一般的です。
特にクリームタイプは、口腔内や入れ歯に安定剤がこびりついてしまうことがあり、洗浄しても完全に取り除けない場合があります。
安定剤が付着したまま使用を続けることで、汚れが付着しやすくなり、口腔内が不潔になりやすく、その結果、口の中で細菌や微生物が繁殖し、口内環境が悪化するリスクが高まります。
さらに、パウダータイプの入れ歯安定剤は、口内の唾液や水分を吸収することで口内が乾燥しやすくなります。
この乾燥も、口内環境が悪化する大きな要因の一つです。
その結果、歯周病やカンジダ症、誤嚥性肺炎などの病気を引き起こす可能性があります。
長期にわたり入れ歯安定剤を使用すると、安定剤の成分がアレルギーなどの症状を引き起こすリスクがあります。
入れ歯安定剤の主成分には天然カラヤガムが含まれており、人体への刺激性が少ないとされていますが、水分を吸収することで非常に高い粘着性を発揮します。
その特性が入れ歯安定剤に適しているために利用されていますが、アイスクリームなどの増粘剤としても使用されており、一部製品からアレルギーの報告があるのも事実です。
さらに、入れ歯安定剤の中にはアルコールを含む製品もあるため、アルコールに敏感な方や過敏症の方は特に注意が必要です。
入れ歯安定剤を安全に使うために
入れ歯安定剤を長期間使用することは、思わぬ副作用を引き起こす可能性があります。
入れ歯安定剤は、歯科医院に行けない際の応急処置として利用し、入れ歯に不具合を感じたときは、まず歯科医師に診察を受けることが最も適切です。
その上で治療を受けたり、安定剤を使用する場合には、正しい使い方を歯科医師に教えてもらうことが重要です。
やむを得ず歯科医の診療を受けられない場合は、使用前に製品の説明書をよく読み、適切に使うことが欠かせません。
まとめ
今回は入れ歯安定剤に関する情報をお伝えしました。
入れ歯安定剤を使用することによって、さまざまなリスクや副作用が生じる可能性があることをご理解いただけたのではないでしょうか。
しかし、正しく利用すれば、入れ歯安定剤は食事を楽しくし、生活の質を向上させる助けとなります。
うまく活用して、日々の生活を快適に過ごしていきたいですね。
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