肉牛が霜降り牛に変わるプロセスは、その育成方法によって大きく左右されるのです。
では、霜降り牛と一般的な肉牛の違いとは一体何でしょうか。
ここでは、高価な霜降り牛にまつわるさまざまな事実を詳しくご紹介いたします。
霜降り牛とは
霜降り牛とは、肉の中に白い脂肪が入った状態を指し、英語では「マーブリング」と呼ばれる現象です。このマーブリングが豊富に含まれている霜降り牛は、日本において特に高級な牛肉として位置付けられています。霜降り牛と普通の肉牛の違いを理解するために、さらに深く掘り下げていきます。
牛肉の等級
牛肉の等級は、さまざまな基準に基づいて決まります。
歩留等級(ぶどまりとうきゅう):この等級は、1頭の牛から得られる食用部分の割合を示しており、AからCの評価で表されます。同じ体重の牛であっても、骨太か肉厚かによって食用部分の量が異なります。食用部分が多い場合はAと評価されます。
肉質等級:これは牛肉の質の高さを示す等級で、脂肪の含有度、脂肪の色や質、肉の色や光沢、さらには肉のしまりやきめの細かさの四つの要素を総合的に判断して評価されます。この等級は1から5の5段階で、5が最も優れた等級を示します。霜降り牛はこの肉質等級において最高の5に該当します。
引用:「神戸肉・神戸ビーフ」の定義 | 神戸ビーフ・神戸肉流通推進協議会
この歩留等級と肉質等級を組み合わせることで、牛肉の格付けが行われます。最高ランクはA5です。
B.M.S(Beef Marbling Standard):これは牛脂肪交雑基準を指し、英語で「さし」とはマーブリングのことです。このナンバーにより、脂肪の混じり具合が明確に理解されます。霜降り牛は通常、ナンバーのNo.8から12に該当します。
ブランド牛とは
日本国内には、約320種類のブランド牛が存在すると言われています。それぞれのブランド牛には、異なる等級基準が設けられています。
肉質等級5のみ 仙台牛 肉質等級4~5のみ 佐賀牛、神戸ビーフ、前沢牛、若柳牛、常陸牛、阿波牛、宮崎牛 肉質等級3~5 米沢牛、大和牛、飛騨牛、熊野牛、The・おおいた豊後牛、オリーブ牛 肉質等級2~5 石垣牛、いわて短角和牛 肉質等級1~5 松阪牛、伊賀牛、近江牛、三田牛、しまね和牛、千屋牛 肉質等級1~4 但馬牛
仙台牛は肉質等級が5でなければその名を名乗ることはできません。一方、松阪牛はすべての等級を含むことが特徴です。
ブランド牛だからといって、必ずしもすべてが霜降り牛であるわけではありません。
例えば、但馬牛には霜降り牛が存在しないこともあります。
和牛とは
霜降り肉は和牛や国産牛の一部ですが、和牛と国産牛の違いについても詳しく説明します。
引用:和牛と国産牛の違いについて~和牛の種類 | 壱岐牛-こやま牧場
和牛は、日本の在来種を基にした品種改良が行われたもので、以下の4種類の牛が該当します。
– 黒毛和種
– 褐毛和種(かつげわしゅ)
– 日本短角種(にほんたんかくしゅ)
– 無角和種(むかくわしゅ)
一方で、国産牛は海外で生まれ育った牛であっても、日本での飼育期間が長ければ国産牛として扱われ、実際には日本の流通の約60%を占めています。
霜降り牛と一般的な肉牛の違い
霜降り牛と一般的な肉牛の違いは、主に餌の内容や育成環境に起因することが多いです。
餌のちがい
霜降り牛と一般的な肉牛では、与えられる餌の種類や割合が異なっています。餌の種類によって、肉質や脂肪の含有率が大きく影響を受けるのです。
引用:粗飼料と濃厚飼料の種類・役割について。 – 有限会社矢野畜産
粗飼料(そしりょう):草を基に作成された飼料です。
濃厚飼料(のうこうしりょう):トウモロコシ、大豆、米ぬかなどを粉末状にし、練り込んで作る飼料です。この餌は、柔らかい肉質を実現するために与えられます。霜降り牛はこの濃厚飼料にかかる費用が非常に高いため、結果的に価格が高くなるのです。
また、ビタミンコントロールと呼ばれる技術があります。これは、肥育期間中にビタミンAの摂取を制限することにより、さし(霜降り)が入りやすくなるというものです。しかし、過度なビタミンコントロールが行われると、栄養失調や失明といった深刻な問題を引き起こすこともあります。
霜降り牛など、脂肪の多い肉牛は、粗飼料に比べて濃厚飼料を多く摂取して成長します。
育つ環境の違い
つなぎ飼い:人間の体と同様に、食べたものに対して運動量が不足すると太る傾向があります。霜降り牛のように脂肪が豊富な牛肉は、狭い囲いの中でつながれて育てられます。また、鼻輪などを用いて痛みを伴う部分でつながれているため、動きたくても動けない状況に置かれることが多いのです。
引用:肉用に飼育される牛の一生| 畜産動物たちに希望を Hope For Animals|鶏、豚、牛などのアニマルウェルフェア、ヴィーガンの情報サイト
一方で、放牧という方法で育てられる肉牛も存在します。これらの牛は主に牧草を食べて育てられ、こうした牛は「グラスフェッドビーフ」と呼ばれます。よく運動して育った肉牛は赤身主体の肉となり、霜降りはほとんど見られません。放牧された牛はつなぎ飼いに比べて肉量が少ないため、単価が上がる傾向があります。このため、放牧牛は一般的に普及していないのが現状です。
霜降り牛や柔らかい肉は、主にこのつなぎ飼いの環境で育成されています。
まとめ
高価な霜降り牛の背後には、牛が栄養失調に陥ったり、失明するという現実が隠れています。ただし、全ての霜降り牛がそのような状態であるわけではありません。しかし、運動不足のつなぎ飼いで肥育されることで、必ずしもストレスフリーな環境で育っているとは言えないのが実情です。霜降り牛が高価である理由は、主に餌代によるものです。そのため、口の中でとろけるような品質の良さは、必ずしも自然なものではなく、人工的に飼育された結果なのです。霜降り牛でなくても美味しいブランド牛は数多く存在します。
高価な霜降り牛を購入する前に、一度は知っておくべき事実をお伝えしました。
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