給料が上がらない、退職金が期待できない、さらには老後の生活に対する不安など、お金に関する問題は人生の中で絶えず付きまといます。これらの悩みは、私たちが日々直面する現実として、多くの人々に共通するものだと思います。
かつては「終身雇用のもと、会社で長年働き、退職金で住宅ローンを完済し、年金で安心して老後を過ごす」というモデルが一般的でした。しかし、現在ではこのような理想的なシナリオが実現しづらくなってきています。そのため、単なる貯蓄だけでなく、投資や資産運用に目を向ける人々が増えているのではないでしょうか。
そこで、資産運用を行う際に注意すべき外貨建て預金についてお話ししたいと思います。
外貨建て預金とは
外貨建て預金とは、簡単に言うと、日本円でドルやユーロといった外貨を購入することを指します。
多くの日本人は、給料を日本円で受け取っています。このため、外貨を購入し、日本円以外の通貨を保有することは、リスクヘッジの一環として有効な手段だと考えるかもしれません。
しかし、外貨建て預金には以下のようなデメリットが存在することを忘れてはいけません。
外貨購入手数料が高額(特に対面営業を行っている銀行など)
外貨を購入する際には必ず手数料がかかります。
最近のネット銀行では、円でドルを購入する場合、片道(円→ドルまたはドル→円)で1ドルあたり2銭という非常に低い手数料を設定しているところもあります。確かに、手数料が安いことは魅力的ですが、無料ではないことに注意が必要です。
一方、対面で営業を行う銀行の手数料は割高であることが一般的です。対面型の銀行は、ネット銀行に比べて人件費が多くかかり、さらに支店を持つことでテナント料や固定資産税といったコストも発生します。これらのコストをカバーするため、手数料が高く設定されるのです。
無論、手数料が無料では銀行の収入源にはならないため、手数料を取ることは銀行のビジネスモデル上避けられない現実だと言えるでしょう。
通貨のパワーバランスで価値が決まってしまう
「円安」や「円高」といった言葉を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。
たとえば、1ドルが100円から110円に上昇すると円安、逆に100円から90円に下がると円高と呼ばれ、これは円の価値が相対的に下がることを意味します。円安は円の価値が低下すること、円高はその逆で円の価値が上昇することを指します。
このように、円の価値が日々変動する理由は、需給の関係によるものであり、
購入される通貨の量が 円<ドルなら円安、 円>ドルなら円高
という単純なメカニズムによって決まります。
つまり、個人が取引する通貨の量よりも、銀行や証券会社などの機関投資家が扱う通貨の量がはるかに大きく、影響力も強力です。私たち個人が持っていない情報を基に、日々通貨の売買を行っている機関投資家に立ち向かうのは容易ではありません。もちろん、一時的にはうまくいくこともあるかもしれませんが、長期的に見れば成功する確率は非常に低いのが現実です。
通貨はインフレ(経済成長)により減価していく
20年前、自動販売機で販売されていた缶ジュースは100円から110円で購入できました。
しかし、現在の自動販売機でのジュースの値段は130円から140円に上昇しています。それにも関わらず、私たちの給料はほとんど上がっていないのが現状です(実質賃金はむしろ減少傾向にあります)。
このように、一度100円で購入できた商品が130円でないと手に入らなくなるということは、物の価値に対して通貨の価値が下落したことを示しています。
日本は平成以降、給料の上昇が見られない状態が続いており、国内総生産(GDP)も停滞しています。この状況は日本だけでなく、他の国々でもインフレ(経済成長)が進み、物の価値が上昇し、通貨の価値が相対的に低下していることを示しています。
インフレ(経済成長)率より預金利息が低い
日本国内での普通預金の利息は、通常年0.001%で、定期預金でも0.1%から0.2%程度であるのが一般的です。
外貨預金であれば年利が1%程度であっても非常に良しとされることがありますが、新興国通貨の場合は年利が1%を超えるものがあるものの、以下のような問題も抱えています。
・流動性が低く、価格が急に暴落しやすい
・流動性が低いために購入手数料が非常に高額
これに対して、アメリカをはじめとする多くの国々では、インフレ(経済成長)率が概ね年2%以上で推移しています。
つまり、インフレ(経済成長)率が預金利息を上回っているため、預金だけでは物の価値の上昇に対処することができないという状況に陥っているのです。
まとめ
以上の理由から、資産形成の手段として外貨預金を利用しない方が良いと考えています。
特に対面営業を重視する銀行にとっては、外貨預金が手数料収入の大きな源となり、割高な手数料を取ることができるため、リスクヘッジの金融商品として勧めることが多いのです。
現代社会では、ネットで完結するサービスが多く存在するにもかかわらず、金融商品に関しては対面での相談を希望する方がまだまだ多いように感じます。これは、外国と比べて日本の金融教育が十分でなく、マネーリテラシーが低いまま社会に放たれる人が多いためではないかと思います。
たとえ銀行を信頼して金融商品を購入し、結果的に損失が出ても、銀行はその損失を補填してはくれません。銀行としては、手数料を回収した時点で利益は確定しているためです。
投資や資産形成は自己責任で行う必要があるという言葉がありますので、個人的にはある程度の知識を身につけてから始めることを強くお勧めいたします。
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