人の命は、予期せぬ瞬間に終わりを迎えることがあります。特に、近しい人が亡くなった場合、その衝撃は計り知れず、現実を受け入れるための感情が追いつかないということは、誰にでも起こり得ることです。
しかし、遺族はただ悲しみに浸っているわけにはいきません。役所における手続きや親族への連絡、さらには葬儀の準備や参列者への案内など、さまざまな事務作業に追われることになります。
戒名とは何か?
戒名とは、仏教において仏の弟子としての証明として与えられる名前を指します。言い換えれば、あの世で使用される名前ともいえるのです。
この戒名は、元々は生前に出家し仏門に入った際に付与されていたものです。一般的には、先祖が眠る菩提寺の住職によって授けられることが多いです。
戒名は本当に必要なのか?
遺族にとって、戒名が必要とされる理由は主に次の点に集約されます。
① 葬儀や法要の際に読経の中で共に唱えられること
② 位牌に記載されること
③ 墓石に刻まれることがあるため
戒名がないと、葬儀が執り行えないのではないかという不安を抱く方も多いでしょう。
一方で、故人にとっては戒名を授かることにより、仏門に入ることで仏様の戒律を守り、死後は迷うことなく極楽浄土へと導かれるとされています。
戒名がないからといって、必ずしも成仏できないわけではないとのことですが、これについては正確な証明をすることができないため、様々な見解が存在します。
戒名の相場について
戒名にかかる費用は、一般的には10万円から50万円程度が相場とされています。しかし、特にランクの高い戒名の場合、100万円を超えることもあるようです。
ただし、戒名料は「お気持ち」や「お布施」として扱われるため、明確に金額が決まっているわけではありません。つまり、非常に曖昧なもので、明朗会計とは言い難いのが実情です。
戒名は宗派によって「法号」や「法名」と呼ばれ、神道では「諡(おくりな)」と称されます。驚くことに、神道の場合は戒名料を徴収しないことが一般的です。
戒名をつけない選択肢
直葬・家族葬
「戒名」は仏教徒として仏門に入る際に付けられる名前ですので、無宗教の方にとっては最初から必要ないということになります。
令和3年度の文化庁の調査によると、日本の宗教人口は約1億8114万人に達し、日本の総人口を遥かに上回っています。これは日本人が単一の宗教を信仰しているわけではなく、身近にある宗教の習慣を受け入れ、日常生活の中で様々な宗教の行事や慣習を取り入れてきた結果といえます。
死後に仏門に入り戒名を受ける必要がないという考え方は、現代社会では自然な選択肢といえるでしょう。最近では家族葬などの小規模な葬儀を選ぶ方も増えており、仏教の儀式に則らない場合、戒名は必要ありません。
戒名を自分で決める
戒名は自分自身がつけることも、また家族が名付けることも可能です。中には、戒名を自動生成するアプリも存在します。
自分で戒名をつけるのであれば、当然、戒名料は発生しません。ただし、自分の名付けた戒名を戒名として認めない僧侶もいるため、その点には留意が必要です。
俗名で位牌を作成する
俗名とは、生前の名前を指します。戒名がなくても、俗名を用いて位牌を作成してくれる仏具屋も存在します。
戒名をつけないことのデメリット
菩提寺に納骨を拒否されるリスク
菩提寺にお墓を持っている方は特に注意が必要です。菩提寺の住職が付けた戒名がない場合、納骨を断られる可能性があります。
戒名をつける際に支払う費用は戒名料としてだけではなく、お布施とも言われるため、お墓の管理費を含めた意味合いもあるかもしれません。
親族からの批判
特に田舎などでは、親族や血縁関係が非常に濃密です。身内が亡くなった際に戒名をつけずに家族葬や無宗教葬を行うと、批判や陰口を叩かれる可能性もあるため、事前にしっかりとした話し合いが求められます。
実際に身内の葬儀においては、一族の長老が祭壇の花飾りに飾る遺族の名前の並びや、四十九日の法要での席順を詳細に決めるという経験をした方も多いことでしょう。地域のしきたりや一族の体面も関わるため、こうした配慮は必要不可欠です。
位牌の重要性
仏教においては、位牌は故人の魂が里帰りする際の場所とされています。法要やお盆の際に位牌に手を合わせることで、安心感を得ることができるとされています。言わば、死者がこの世に立ち寄るための場所というわけです。
まとめ
現代では、戒名はもちろん、お葬式やお墓が不要だという選択肢も存在する時代です。もし、死後に誰の手も煩わせることなく静かに人生を終えたいと願ったり、頼る人がいないと考えるのであれば、事務手続きを代行してくれる法人団体に問い合わせてみるのも一つの手段です。
戒名が必要だとされる理由には以下のようなものが挙げられます。
・安心感を得るために戒名が必要
・周囲が皆つけているから戒名が必要
・親戚や近所、勤務先への建前上、戒名が必要
故人が望み、遺族が納得しているのであれば、伝統に従い戒名を付けて故人を見送るのが良いでしょう。しかし、お葬式や戒名にかかる費用は決して安くはありません。
また、お墓を建てる際には、永続的にお墓を守ってくれる人が必要です。本当に戒名や葬儀が必要かどうかをしっかりと考え、大切な家族に自分の意向を伝えることが重要です。
自分自身が最後のお別れをどのように行いたいか、大事な人が亡くなった際にどのような供養を行うべきか、これらは家族だけでは決められない重要な事柄です。元気なうちに、後悔のないようしっかりと話し合いをしておきましょう。
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