スーパーに足を運ぶと、季節を問わず多様な種類の野菜が整然と並んでいます。「今日はこれを作りたい!」と思った時、必要な材料をすぐに手に入れることができるのが現代の便利な現実ではないでしょうか。これは非常に利便性の高い社会の証明とも言えますが、果たしてそれらは自然のサイクルによって生み出されたものなのでしょうか。季節を問わずに野菜が手に入るため、旬の野菜について知らない子供たちも少なくないと聞きます。また、カットされた野菜が多く流通しているため、野菜の本来の姿を知らない子供たちもいるようです。
私の娘が2歳の時、保育士さんが野菜の絵本を読み聞かせてくれました。その際、丸ごとのかぼちゃの絵が登場したそうです。我が家では父が毎年かぼちゃを育てているため、家の中には丸ごとのかぼちゃがいくつも転がっているのですが、娘は「かぼちゃ!」とすぐに言えたそうです。しかし、周りの子供たちはそのカボチャのイメージが切り分けられた状態、つまり中が黄色いものしか知らなかったため、緑の大きな形のカボチャには気づかなかったとのことです。保育士さんも「よく知っていますね」と感心されていましたが、子供たちが知らないという現実に私は驚きを隠せませんでした。
日本には四季が存在します。それに伴い、本来その季節にしか収穫できない野菜があります。そして、それらの野菜を食生活に取り入れることは、私たちの健康に多くの良い影響をもたらすことが理にかなっています。しかし、現在のスーパーでは季節を問わずさまざまな野菜が手に入るため、旬ではない野菜を摂取することで体に悪影響を及ぼす可能性も考えられます。
旬の野菜を食べることの重要性について、なぜ季節外れの野菜を避けるべきかを詳しく説明していきたいと思います。
私たちの体も四季と共に変化している
四季の移り変わりとともに、私たちの身体も季節ごとに変化しています。具体的にはどのように変わっているのか、一緒に見ていきましょう。
春
春になると、植物が芽吹き始めるように、私たちの体内でも冬の間に蓄えられていたエネルギーが徐々に目覚めていきます。また、日照時間が増えることで、私たちの体も活動的になり、エネルギーが身体の上部へと上がっていくのです。
梅雨(土用)
梅雨の時期は湿気が多く、私たちの体にも湿気がたまりやすくなる季節です。この時期は五臓の「脾」(胃と左の腎臓の間に位置する臓器)の季節でもあり、脾は胃と連携して働くため、この季節には脾胃に負担がかかりやすいとされています。そのため、消化に良い食材を積極的に摂取することを心掛けると良いでしょう。
夏
植物が最も旺盛に成長する時期であり、私たちの体のエネルギー(陽のエネルギー)も四季の中で最も高まります。しかし、日本の夏は湿気が多く、暑さが続くため、汗をかきやすく体力を消耗しやすい季節でもあります。体の熱を冷やすために、五臓の「腎」が活発に働くため、腎を補う食材を摂取する必要があります。また、暑いからといってエアコンに長時間当たったり、冷たいものを過剰に摂取することには注意が必要です。
秋
万物が実を結ぶ秋は、春夏にかけて外向きだったエネルギー(陽)が次第に下へ降り、体の中に閉じこもる(陰)ようになります。この時期は夏の疲れを癒すために過ごし、冬に向けて体力を蓄える季節でもあります。しかし、秋は空気が乾燥し始めるため、肌や呼吸器系も乾燥しやすく、風邪を引くリスクが高まります。この時期には五臓の「肺」が弱くなることが多いです。
冬
動植物が冬眠に入ったり、静かにひっそりと過ごすこの季節は、私たちもエネルギーをあまり使わずに春に向けて体力を保存する時期です。寒さと乾燥が続くことで免疫力が低下し、風邪を引きやすくなるなど体調を崩しやすい季節ですので、五臓の「腎」が体力を保持するために重要な役割を果たします。寒さを防ぐために、体を温めることが非常に重要となります。
四季に合った食事とは
私たちの体が四季の移り変わりに合わせて変化していることをご理解いただけたでしょうか。春には冬に蓄積された毒素を排出するデトックスを行い、暑い夏には体力を補うために水分を補給し、熱を放出させる必要があります。秋には乾燥から身を守り潤いを補充し、冬には寒さをしのぎ、体力を温存するために体を温めることが求められます。
つまり、春にはデトックス効果のある苦味の食材を取り入れ、夏には体の熱を冷やす水分の多い夏野菜を食し、秋には潤いをもたらす白い食材、冬には体を温める根菜類を摂ることが、自然の摂理に合った食事だと考えられています。やはり、旬の野菜は私たちの体に適しているのではないでしょうか。
季節ごとの代表的な野菜について
ここでは四季それぞれの代表的な野菜をご紹介します。
春
春キャベツ、菜花、ニラ、山菜、新ジャガイモ、新玉ねぎ、さやいんげんなど
夏
トマト、きゅうり、ナス、ゴーヤ、枝豆、ピーマンなど
秋
蓮根、ジャガイモ、山芋、里芋、キノコ類など
冬
白菜、大根、人参、生姜(加熱すること)、ブロッコリー、長ネギなど
これらの野菜はスーパーでは季節を問わず年中手に入れることができると思います。しかし、旬の野菜は一般的にお得であったり、たくさん売られていたり、地元産のものが目立つ場所に置かれているため、旬であることが一目で分かるようになっています。
旬の野菜を見分けるのが最も簡単なのは、道の駅やJA(農業協同組合)です。地元の農家が育てた野菜は、基本的に旬のものしか置かれていないため、特に新鮮でお値打ちであることが多く、とてもおすすめです。
買うべきではない季節外れの野菜とは
ここまでお読みいただき、少し理解が深まったかと思いますが、買うべきではない野菜は、ずばり「季節外れの野菜」です。特に寒さ厳しい冬にトマトやキュウリ、ナスなど体を冷やす食材を摂り続けると、どうなってしまうのでしょうか。私たちは体を温めて免疫力を高め、冬を乗り越える必要があるのに、逆に体を冷やしてしまうことになります。
これらの夏野菜は本来、寒い冬には育たない野菜です。暑い日差しを浴びて成長する野菜たちです。日本の食文化は和食から洋食化が進み、カタカナ名の料理が増え、年中トマトなどの夏野菜が出回るようになりました。
義理の実家に年始に帰省した際、私の娘が喜ぶからという理由でミニトマトを使ったサラダが用意されていたことがありました。それは特別に用意していただいたご厚意だとは思いましたが、冬にトマトを食べることに驚いたことを今でも覚えています。
夏に冬の野菜を見かけることは少ないですが、逆に夏の大根や白菜は何となく美味しそうではない気がします。やはり旬の食材は、その季節や気候に合わせて自然に育つため、美味しくいただけるのです。
一般的に言われることですが、野菜や果物は以下のように分類されます。
夏場・南方で育つ野菜果物:体を冷やす作用(陰性の食べ物)
バナナやパイナップル、コーヒーなどは南国で収穫されるもので、これらは体の熱を冷やす効果があります。南国に住む人々はこれらを食べることで暑さをしのいでいます。つまり、南国の食材は本来の日本人の体には合っていないと考えられる食材であり、過剰摂取には注意が必要です。
冬場・北方で育つ野菜果物:体を温める作用(陽性の食べ物)
根菜類などは冬に地中で育ち、体を温めると言われています。冬が旬のリンゴも、青森や長野など寒い地域でしか収穫されません。冬には積極的に取り入れたい食材です。また、現代人は加工品の摂取が増え、糖類の過剰摂取が問題視されています。
昔の生活様式と比較して、体を動かす機会が減少し、デスクワークが増えて筋力が低下し、年中体が冷えている方も多いとされています。体を温める食材を積極的に取り入れることが重要です。
季節に応じて、陰と陽の食べ物を上手に取り入れることで、体を中庸(真ん中)に保つことが大切だと言われています。
まとめ
旬の食材が分かりにくくなりつつある現代ですが、旬の食材の重要性をご理解いただけたでしょうか。まとめとしては以下の点が挙げられます。
・四季の変化に伴い、私たちの体も変化している
・季節に育った旬の野菜を摂取することは、私たちの健康に良い影響を与える(夏は体の熱を取り、冬は体を温めるなど)
・季節外れの野菜を摂取することは自然の摂理に反する
スーパーで野菜や果物を購入する際に、一度立ち止まって考えてみていただければと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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