最近、台風や地震といった自然災害が増加傾向にあり、毎年日本のさまざまな地域で風災、水害、震災が発生し、甚大な被害をもたらしています。このような状況を受け、多くの人々が火災保険に加入し、災害によって壊れたり、燃えたりしてしまった建物や家財の復旧に向けて、火災保険から支払われる損害保険金を重要視しています。
かつては火事の際のみ支払われるタイプの火災保険が多かったですが、最近では風水災にも対応した保険商品が増加しています。こうした状況の中で、保険金請求コンサルティングサービスを提供する業者が増えてきています。
これらの業者は、損害保険を請求する機会があまりないため、「専門家に依頼すれば安心できるだろう」と思い、サービスを利用したくなるかもしれません。しかし、このような業者にはトラブルが多く発生しているため、注意が必要です。
保険金請求コンサルティングってなにをしてくれるの?
簡単に言えば、「火災保険金の支払い請求手続きを、お客様の代わりに保険会社に行ってくれる」というサービスです。業者によっては「保険金申請代行」や「保険手続代理サービス」といった異なる表現を用いることがありますが、基本的に提供される内容は同様です。
税金の手続きを税理士に依頼したり、開業手続きを行政書士に任せたりするのと同じように感じられるかもしれません。しかし、それらの専門家は国家資格を持っており、関連する法律が明確に定められていますが、保険金請求コンサルティングには特に必要な資格が存在せず、関連する法律もありません。言い換えれば、「名乗った者勝ち」とも言えます。
保険金請求コンサルティングではどんなトラブルがあるの?
このようなサービスを提供すること自体は違法ではありませんが、さまざまなトラブルが発生しているため、損害保険会社などはホームページ上で注意喚起を行っています。
代表的なトラブルとしては、「支払われた保険金の一定割合を代行手数料として業者に支払わなければならなくなった」というケースがあります。最悪の場合、100万円の保険金が支払われたとしても、業者に手数料として50万円を渡す必要があり、被害者本人にはわずか50万円しか残らないこともあります。
後で契約書を確認すると、「申請手数料として、支払われた保険金の50%を業者に支払う」と記載されていることがあり、「契約した通りです」と言われてしまうこともあります。保険会社に相談しても、被害者と業者との間の契約内容については口を出せないため、どうすることもできません。
知らないまま保険金詐欺に加担させられているかも?
中には、保険金請求コンサルティング業者が修理業者を兼ねているケースも存在します。彼らは「災害被害の調査です」と称して訪問し、「屋根に台風の影響と思われる破損が見受けられます。火災保険を使えば修理できますので、雨漏りが起こる前に直しましょう。保険申請に必要な手続きもこちらで行いますので、お客様の負担はありません」といったセールストークで営業をかけることがあります。
このような業者は「保険会社は顧客からの申請の場合、支払いを渋ってなかなか台風の被害を認めようとしません。しかし、私たちは建築の専門家なので、保険会社と交渉して全額保険金として認めさせることができます」と言いがちです。
しかし、実際には屋根の破損は老朽化によるものであることが多く、台風による破損部分以外まで保険金を請求する行為は、「便乗修理」や「過剰修理」として保険金詐欺に該当する可能性があります。
「自己負担がないならお願いしようかな」と軽い気持ちで話に乗ってしまい、知らず知らずのうちに保険金詐欺に加担してしまうことも考えられます。
保険金は支払われても、修理でもめることも
便乗修理や過剰修理を勧めてくる業者に依頼した場合、最終的に保険会社が便乗部分や過剰部分を認めず、支払われた保険金よりも修理費が高くついてしまうことがあるのです。
当初「自己負担はありません」と言っていた業者も、こうなってしまうと「保険会社が支払いを渋っているので、文句は保険会社に言ってください。すでに修理は始まっているので、修理代金はお支払いいただきます」と言い訳をし、責任を保険会社に押し付けるだけで、何も進展しないというトラブルも増加しています。
自動車保険のように、保険金が直接修理工場に支払われることが一般的な場合とは異なり、火災保険の場合は保険会社と修理業者の間で直接交渉や調整が行われることはあまり一般的ではないため、この点にも注意が必要です。
このような保険金請求コンサルティングと便乗・過剰修理を一緒に行う業者は、「特定修理業者」と呼ばれており、保険会社だけでなく、日本損害保険協会や国民生活センターなどの公式サイトでも注意喚起がなされています。
保険金請求は自分でできる
実際、損害保険金の請求に関しては、特別な専門知識が必要なわけではありません。家屋の所有関係が複雑でない限りは、保険金請求書や修理見積もり、被害箇所の写真といった必要な書類を揃えて提出するだけで済むのです。
もし書類の記入や提出について不安がある場合には、加入している保険会社や代理店に相談すれば、通常は適切にサポートしてくれるはずですし、その際に特別なコンサルティング料金を請求されることもありません。
まとめ
この記事は以上となります。災害に見舞われてしまい、気持ちが沈んでいるときには、保険金の手続きが煩わしく感じられることもあるでしょう。しかし、だからといって安易に保険金請求コンサルタントに依頼すると、高額な手数料を請求されたり、保険金詐欺に加担させられたり、修理代金の支払いでトラブルに巻き込まれたりする可能性があるため、十分に注意を払うことが重要です。
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