ビタミンと聞くと、多くの人がポジティブな印象を抱くのではないでしょうか。それもそのはず、ビタミンは五大栄養素の中の一つとして、私たちの健康に欠かせない存在だからです。
三大栄養素として広く知られているのは、糖質、タンパク質、そして脂質の3つです。これらの栄養素は、基礎代謝や身体活動に必要なエネルギー源であり、さらに体の構成成分としても重要な役割を果たしています。五大栄養素とは、これらの三大栄養素に加えて、ビタミンとミネラルを含むものを指します。ビタミンやミネラルは、身体の正常な機能を保つために欠かせないものだとされています。
ビタミンは一口に言っても、多種多様な種類が存在し、それぞれのビタミンには健康を維持するために必要な一日の推奨摂取量などが設定されています。現在の私たちの食生活においては、ビタミン類は食品だけでなく、さまざまな形で手に入るようになりました。
その代表的な例として挙げられるのが、サプリメントです。かつては野菜や果物から摂取していた栄養素を、今では手軽に錠剤として摂取できるようになりました。さらに最近では、グミやお菓子の形でもビタミンを摂取できるようになっています。
しかし、過剰な健康意識から、多くの人々がビタミンを過剰に摂取してしまうことが懸念されています。ここでは特に、過剰摂取が心配されるビタミンD(VD)について、注意すべきサプリメントとしてご紹介したいと思います。
ビタミンD(VD)の働きと欠乏症
ビタミンD(以下、VD)は、主に「骨を強くする役割」があることで知られています。具体的には、カルシウムやリンの吸収を促進し、強い骨を形成するのを助けます。
VDは肝臓と腎臓を経由して活性型ビタミンDに変換されます。この活性型ビタミンDは、小腸でカルシウムとリンの吸収をサポートし、血液中のカルシウム濃度を高める役割を果たします。このプロセスにより、カルシウムが骨に沈着し、骨がしっかりと形成されていきます。
もしカルシウムの濃度が低下すると、体は骨からカルシウムを放出して血中の濃度を調節します。この調整機能が正常に働かない場合、成人では骨が変形し脊椎が曲がってしまう「骨軟化症」や、骨量が減少して脆くなってしまう「骨粗しょう症」の原因となります。また、成長期の子供においては、背骨や足の骨が曲がる「くる病」を引き起こすことがあります。このくる病は放置すると低身長やO脚など、将来的な健康に大きな影響を及ぼす可能性があります。VDの不足がもたらす疾患は、これだけではありません。
さらに、VDには血液凝固や筋肉の収縮、エネルギーや脂質の代謝においても重要な役割を果たしていることが知られています。
VDが多く含まれる食材とその摂取基準
VDを豊富に含む食材には、イワシやサケ、ウナギなどの動物性食品が挙げられます。特に、魚の皮の部分には豊富に含まれているため、皮ごと食べることでより効果的に摂取することができます。
動物性食品以外でも、キノコ類にはエルゴステロールというビタミンDの前駆体が含まれており、紫外線に当たることでビタミンDに変換されます。生のシイタケなどは、2〜3時間晴れた日に干すだけで、ビタミンDの含有量が増加します。
ちなみに、厚生労働省が発表した『日本人の食事摂取基準 2020年版』によれば、1日のビタミンDの摂取目安量は8.5μgとなっています。小児の場合はこの目安量が低く、高齢者は皮膚でのビタミンD合成が難しいため、必要量が高くなります。先に述べた食品の中では、サケ100gあたりに33μg、マイタケ100gあたりに4.9μgのビタミンDが含まれています。また、卵1個(Mサイズ)にも約2μgのビタミンDが含まれています。食品群別に見てみると、魚介類からの摂取量が最も多く、続いて卵類、きのこ類、肉類、乳類の順で摂取されています。
このような結果から、食生活に気をつけることに加え、日光を浴びる習慣を持つことで、ビタミンDが不足する可能性は非常に低いと言えるでしょう。
VDを過剰に摂取するとどうなる?
ビタミンDには、五大栄養素として多くの重要な働きがあり、そのため不足を心配してサプリメントで補おうとする人が増えています。
ビタミンには脂溶性と水溶性の2種類があり、ビタミンDは脂溶性に属します。脂溶性ビタミンは体内に蓄積され、過剰に摂取すると過剰症を引き起こす可能性があります。サプリメントで手軽にビタミンを補給できる現代では、過剰症についての認識が高まっています。
ビタミンDの過剰症として最もよく知られているのは、高カルシウム血症です。この状態では、過剰なカルシウムが血管壁や腎臓、脳、筋肉に沈着したり、軟組織の石灰化が進むことで、食欲不振や吐き気、脱力感、神経過敏、高血圧などの症状が現れることがあります。さらに、腎障害や軟組織の石灰化障害なども引き起こす可能性があります。
脂溶性ビタミンは体内の筋肉や脂肪に蓄えられ、徐々に血液中に放出されるため、過剰症の症状は摂取を中止してもすぐには回復しないことが多く、症状が半年以上続くこともあるという報告もあります。
まとめ
ビタミンDには多くの重要な働きがあり、正常な機能を維持するためには欠かせない存在です。そのため、ビタミンDの欠乏症にばかり目が行きがちです。
現在、スーパーにはさまざまなグミサプリやマルチビタミンを含む商品が並んでいますが、食生活においてビタミンだけに着目して食材を選ぶことは少ないのが実情です。そのため、サプリメントで補おうとする人が多くなっています。
しかし、現代の生活においてバランスの取れた食事を心がけていれば、ビタミンやミネラルが不足することは考えにくいのです。
サプリメントの購入を控え、今の食生活に目を向けることで、サプリメントを摂取している時よりも健康的な体を手に入れることができることでしょう。
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