自然な香りを好む方々の中には、日常生活の中でエッセンシャルオイル(精油)を取り入れている方が多いのではないでしょうか。
人工的に合成された香りとは異なり、エッセンシャルオイルは植物由来の香り成分のみを使用しているため、心と身体に多様なポジティブな影響をもたらすことができます。
現在、私たちが使用している医薬品も多くは植物の特定の成分を抽出したもので、その効果がどれほど強力であるかを考えると、植物の持つ力を軽視することはできません。
ただし、妊娠中の方や特定の疾病を抱えている方にとっては、不適切なエッセンシャルオイルも存在するため、使用に際しては十分な注意が求められます。
そこで、今回は特に高血圧の方が避けるべきエッセンシャルオイルについて詳しくお話ししたいと思います。
エッセンシャルオイル(精油)とは
エッセンシャルオイルは、植物の花や茎、葉、さらには樹皮や樹脂、果物の皮などから抽出される天然の芳香成分を含む揮発性有機化合物です。
基本的に天然由来であるため、他の人工香料とは明確に異なっています。
<抽出方法>
- 水蒸気蒸留法
- 圧搾法
- 揮発性有機溶剤抽出法(アブソリュート・レジノイド)
- 油脂吸着法
- 超臨界流体抽出法(二酸化炭素抽出法)
エッセンシャルオイル(精油)の抽出方法には上記のようなものがあります。
多くのエッセンシャルオイルは水蒸気蒸留法を用いて抽出されています。
(例)ラベンダー、ローズマリー、ユーカリなど
また、果皮を用いる柑橘系のエッセンシャルオイルでは圧搾法が一般的に使われます。
(例)レモン、ライム、ベルガモットなど
揮発性有機溶剤抽出法は、花の香り成分が熱に敏感な場合や、樹脂から精油を抽出する際に用いられる方法です。一般的に植物から抽出されたものはアブソリュート、樹脂から抽出されたものはレジノイドと呼ばれます。
(例)
アブソリュート | ジャスミン、ローズAbsなど |
レジノイド | ベンゾインなど |
油脂吸着法は、揮発性有機溶剤抽出法の前に使われていた古い手法で、歴史的にも重要な抽出方法です。この手法で得られたものもアブソリュートと呼ばれますが、手間がかかるため現在ではあまり行われていません。(現代のアブソリュートやレジノイドは主に揮発性有機溶剤抽出法を用いています)
※有機溶剤抽出法では微量の溶剤が残るため、エッセンシャルオイルには含まれないとの見解もあります。
超臨界流体抽出法は1970年代から始まった手法ですが、設備投資が高額であるため、まだ一般には広く普及していません。今後の発展に期待が寄せられています。
エッセンシャルオイル購入時の基本的注意点
エッセンシャルオイルは、基本的に植物の天然芳香成分を抽出したものです。そのため、購入時には以下のポイントをチェックすることが重要です。
これらの3つは確認しておくべき最低限の項目です。
天然成分であれば「エッセンシャルオイル」と記載されており、裏面ラベルには原産地やその他詳細が必ず明記されています。これらの情報が記載されていない商品は信頼性が低いため、購入を避けた方が良いでしょう。また、植物名は国や地域によって異なる場合があるため、必ず学名で確認することが大切です。
さらに、エッセンシャルオイルは湿度や温度の変化に敏感であり、光の影響も受けやすいです。そのため、保存時には冷暗所が推奨されているのですが、販売時に遮光瓶に入っていないものはほとんどがエッセンシャルオイルではありません。たとえエッセンシャルオイルであったとしても、状態が良いとは言えないため、こちらも避けるべきです。
また、極端に安価な製品にも注意が必要です。特にローズやジャスミン、メリッサなど元々高価なエッセンシャルオイルが非常に安く販売されていることがありますが、これらはエッセンシャルオイルでない場合や人工的に合成された香りである可能性があります。
ホホバオイルなどで何%希釈されていると明記されているものもあります。このような表示がある商品は、天然のオイルに希釈されていることを理解した上で購入することができれば問題はありません。
エッセンシャルオイルの主な働き
次に、エッセンシャルオイルが持つ効果について詳しく見ていきましょう。
植物は、自然界において水、土、空気、そして太陽から必要なエネルギーを自ら生成しています。また、さまざまな病気や昆虫からの捕食を防ぐために、特有の香りを生成し、さらには花粉を運ぶ昆虫を引き寄せるための香りを作り出すなど、生存競争を勝ち抜くためにさまざまな働きを持つ成分を生産しています。
このように植物が持つさまざまな作用をもたらす芳香成分を抽出したものがエッセンシャルオイルであり、人の心や体にも多種多様な作用をもたらします。
<エッセンシャルオイルの様々な作用>
- 免疫賦活作用
- 自律神経調整作用
- ホルモン調整作用
- 抗菌・抗ウイルス作用
- 虫除け作用
- 収斂・保湿作用
- 鎮痛作用
- 鎮静作用
- 集中力向上など
上記に挙げたものはエッセンシャルオイルの効果の一部に過ぎませんが、心身の両方に多くの恩恵をもたらしてくれるのがこのエッセンシャルオイルの特徴です。
高血圧の方は注意が必要
心身ともに有効なエッセンシャルオイルですが、体調や健康状態によっては使用を控えた方が良いものも存在します。
妊娠中の方が使用を避けるべきエッセンシャルオイル(ホルモン調整作用があるものなど)が存在することはよく知られていますので、注意している方も多いかもしれません。
同様に、実は高血圧の方が避けるべきエッセンシャルオイルも存在することをご存知でしょうか。
自律神経やホルモンに影響を与えるエッセンシャルオイルは、血圧にも影響を及ぼす可能性があります。高血圧の方は、血圧を上昇させる作用のあるエッセンシャルオイルは避けるべきです。
血圧を上昇させるエッセンシャルオイル (精油)
多くの方が普段から使用しているであろうローズマリー(その中でも特に有名なのが1,8シネオール)は血圧を上昇させる作用があります。
集中力ややる気を向上させるエッセンシャルオイルの代表的存在であるローズマリーですが、自律神経の交感神経を活発化させることは、心身が緊張状態になることを意味しています。
緊張した状態になると、血管が収縮し、結果的に血圧が上昇します。また、興奮状態になるとアドレナリンも放出され、これも血圧を上昇させる要因となります。(アドレナリンは状況によって血圧を下げることもありますが)
交感神経が優位になると、心身は活動的で緊張状態になりがちで、その結果、血圧が上昇することになります。通常の血圧範囲内の方であればそれほど気にする必要はありませんが、高血圧の方は使用量を減らすなど、少しの配慮が必要です。
高血圧の方にとって使用する際に配慮が必要なローズマリーですが、その効能の幅は非常に広く、ぜひとも試していただきたいエッセンシャルオイル(精油)の一つとなっています。
ローズマリーのシャープな香りは、朝目覚めた時や一日のスタート時に気分を爽快にさせてくれる効果があります。先ほど述べたように、集中力を高めることができるため、仕事や勉強の際に使いたいエッセンシャルオイルの一つでもあります。
また、記憶力向上作用についての研究報告も多く、仕事や勉強以外でも認知症対策として注目されているハーブでもあります。(高齢者に使用する際は血圧への配慮が必要です)
そのほかにも、虫除け効果や殺菌作用など、多くの働きを持っているため、日常生活の中でうまく取り入れていきたいですね。
高血圧の方は避けた方が良いエッセンシャルオイル(精油)まとめ
高血圧の方にはローズマリーは確かに注意が必要なエッセンシャルオイルです。しかし、エッセンシャルオイルの特性やその作用を理解することで、自分の体調を考慮しながら、適切な種類や量を選ぶことができるようになります。
自然がもたらすエッセンシャルオイルの魅力を知り、それを日常生活に役立てていただけることを心から願っています!
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