買い物に行ってデニムを選ぶ際、皆さんはどのような基準で選んでいますか?色合いや形状、さらにはお気に入りのブランドなど、選択肢は様々です。
しかし、実はそれ以外にも重要な選び方があります。それは、デニムが製造され、私たちの手元に届くまでの過程です。
現在、ファストファッションが広く普及し、手頃な価格で衣服を購入できることが当たり前になっています。その中でも、デニムは多くの人に愛されるアイテムですが、実はデニムの製造過程が環境や人々に及ぼす影響は非常に大きいのです。
今回は、デニムの製造に伴う問題について詳しく解説し、さらにおすすめのブランドもご紹介していきます。
環境汚染
デニムの製造は、水質、土壌、エネルギーなどに多大な負荷をかけています。実際、2019年に行われた国連貿易開発会議(UNCTAD)では、繊維・アパレル業界が環境汚染の原因となる産業の第2位に位置づけられています。
農薬問題
農薬問題は、デニムの主成分であるコットンにも深刻な影響を及ぼしています。コットンを栽培するための農地は全世界で約3%ですが、その中で殺虫剤は全世界の16%、除草剤は7%も使用されているのです。
なぜこれほど多くの農薬が必要とされるのでしょうか。それは、天然繊維であるコットンが、麻に比べて害虫に狙われやすいため、殺虫剤の使用が不可欠となっているからです。
しかし、農薬の使用は農家にとって健康被害を引き起こす要因ともなります。めまいや吐き気、倦怠感などの健康問題で苦しむ農家が多く存在します。また、農薬が河川や海に流れ込むことで水質汚染が進行し、人間や動物の飲み水が奪われる結果を招いています。
資源、エネルギー問題
驚くべきことに、ジーンズ1本を製造するには約7500ℓの水が必要とされています。この量は平均的な人が1年間に飲む水の量に相当するのです。
水以外にも、デニムの製造に伴うCO2の排出量も大きな問題とはなっています。デニムに限らず、1枚の衣服を作る際に発生するCO2の排出量は約25.5kgで、これは500mlのペットボトルを255本製造するのと同じ排出量です。(環境省)
製造過程だけでなく、洗濯による排出も多く、デニム1本がライフサイクルの中で排出するCO2は33.4kgに達すると言われています。多くの人が洗濯時のCO2排出を意識することは少ないかもしれませんが、湯洗いを水洗いに切り替えたり、デニムの洗濯頻度を減らすことで、排出量を削減することが可能です。
マイクロファイバーやマイクロプラスチック
洗濯の際に出るのはCO2だけではありません。マイクロファイバーは、繊維の太さが髪の毛の100分の1に過ぎず、マイクロプラスチックは5ミリメートル以下の微細なプラスチックを指します。
これらは洗濯中に服から抜け落ち、非常に微細なため、下水処理を通過して海に流れ出ることになります。1本のデニムを洗濯するたびに、56,000本もの繊維が流出する可能性があるとされています。これは、フリースジャケットを洗濯した際の約10倍の数です。
海に流れ出たマイクロファイバーやマイクロプラスチックは、海洋生物がそれを餌と間違えて摂取し、結果として死に至るケースも多く見られます。また、その魚を食べることによって、私たちも知らず知らずのうちにマイクロプラスチックを摂取しているかもしれません。
労働環境
コットンの農薬問題に加え、労働環境においても低賃金や児童労働が深刻な問題となっています。特に発展途上国においては、コットン栽培に従事する子供たちが大人よりも安い労働力として使われています。
特に女子児童が多く働かされていることが問題視されています。発展途上国では、女性が教育の重要性を理解していないことが多く、親の借金を返済したり、生活費を稼ぐために学校に通えずに働くケースが多く見受けられます。
また、農薬を使用することで健康を害する子供たちも多く、最悪の場合には命を落とすこともあります。
オーガニックコットン
これらの環境汚染や労働環境の問題を少しでも改善するために、オーガニックコットンという選択肢があります。オーガニックコットンとは、厳格な基準を満たした有機農法で栽培されたコットンのことを指します。
オーガニックの基準は以下の通りです。
- 約3年以上、化学農薬や殺虫剤、除草剤などの有害な化学合成薬剤を一切使用していない土壌であること
- 栽培時に化学薬品の使用による健康や環境への負担を最小限に抑えていること
- 遺伝子組み換えなどの種子を使用していないこと
- 土づくりから農産物の出荷まで、他のものと混合しないようにしていること
オーガニックコットンを使用しているからといって、使用感に大きな差はありません。そのため、オーガニックコットンが高価だと感じる方もいるかもしれませんが、製品に対する正当な取引(フェアトレード)を行うことで、低賃金や児童労働に関する問題を解決する手助けができるのです。
このような取り組みを行っている原材料を利用したデニムを購入することで、目には見えないところで環境や人に優しい活動に貢献できるというわけです。
オーガニックコットンのデニムブランド
オーガニックコットンを使用したデニムを探そうとすると、店舗やインターネットでの確認が手間に感じることも多いでしょう。そこで、今回はオーガニックコットンを使用しているおすすめのブランドを4つご紹介します。
people tree×Leeのコラボデニム
フェアトレード及びオーガニック製品で名を馳せるpeople treeと、人気の老舗ブランドであるLeeのコラボ商品です。Leeで展開されているデニムでは、オーガニックコットンを20%使用し、環境負荷を減らすための脱色加工や、水の使用を抑えるドライ・ウォッシュ技術を取り入れています。
着用した際の感触やコーディネートの例も掲載されているため、実店舗に足を運べなくても簡単に探すことができそうです。
https://www.peopletree.co.jp/special/Lee_denim_aw17/
Nudie jeans
Nudie Jeansは、スウェーデン発のブランドです。このブランドでは、デニム生地にオーガニックやフェアトレード、さらにはリサイクルコットンを使用しています。さらに、デニムの無料リペアサービスを提供しており、長く使用し続けることが可能です。
また、再生可能エネルギーの活用など、持続可能なデニムブランドを目指して活動しています。
https://www.nudiejeans.com/ja/
Levi’s
知名度の高いLevi’sも、サステナブルな取り組みに注力しています。2011年から水の使用効率を向上させる取り組みとしてWater<less製法を導入し、2020年までに約130億リットルの水を節約することに成功しました。
2020年には、使用されるコットンの83%が、オーガニックコットンやリサイクルコットンに切り替えられています。さらに、輸送方法の見直しや製造工場のエネルギー効率を改善する取り組みも行っています。
Nudie Jeansと同様に、リペアサービスを提供しており、Levi’sの製品は財布やバッグ、クッションカバーなどに生まれ変わることができます。
https://www.levi.jp/home
無印良品
シンプルなデザインと手頃な価格で高品質な商品を提供する無印良品にも、オーガニックコットンを使用したデニムがあります。手間や電力を多く必要とするユーズド加工を中止し、色によっては染色回数を減らすことで、ウォッシュ加工に使用する水の削減にも取り組んでいます。
デニムの価格も手頃なので、初めての一本として購入しやすいのではないでしょうか。
https://www.muji.com/jp/ja/feature/clothes/11906
まとめ
デニム一本を取り上げただけでも、数多くの問題が存在することが明らかになりました。安価であったり、自分の好みに合ったデザインであったりする理由だけでなく、どのように製造されたのかといったバックストーリーを知ることで、より大切に、そして愛着を持って使用できるのではないかと思います。
また、最も手軽に取り組める方法は、今持っているデニムをできるだけ長く履き続けることです。履かなくなった場合でも、捨てるのではなく古着として売却したり、他の人に譲るという選択肢も一つの方法として考えられます。
次に新しいデニムを購入する際には、この記事の内容も参考にして選んでいただければと思います。
コメント