物価の上昇が続く中、私たちの家計はますます圧迫されているのが現状です。特に毎月発生する光熱費は、少しでも抑えたいと考える方が多いのではないでしょうか。
しかし、残念なことに電気料金は年々高騰しています。特にお子様がいる家庭では、5年や10年先を見据えると、家族の生活スタイルが変わり、異なる部屋で過ごす時間が増えることが予想されます。その結果、部屋数に応じて電気代も増加することが避けられないのです。
できる限り光熱費を抑える手段を講じる必要があります。今の時代、SDGsが求められている中で、環境に優しく省エネな方法として注目されているのがエコキュートです。エコキュートは、電気代を抑えるだけでなく、持続可能な社会づくりにも貢献できるため、多くの方に認知されています。
ただし、エコキュートには向いていないケースや注意すべき点も多々存在しますので、その点も理解しておくことが重要です。
エコキュートとは
エコキュートは正式には「自然冷媒ヒートポンプ給湯器」と呼ばれ、ヒートポンプ技術を利用して少量の電力と大気中の熱を組み合わせてお湯を沸かす家庭用の給湯システムです。
このシステムは大きく「ヒートポンプ」と「貯湯タンク」の2つの主要部分から構成されています。
「ヒートポンプ」はエアコンの室外機に似た形状をしており、熱を生み出す役割を持っています。
「貯湯タンク」は、沸かしたお湯を貯めておくためのタンクであり、家庭によってその大きさは異なりますが、大型の冷蔵庫のような形状をしています。
エコキュートがどのように熱を生み出し、お湯を作るのか、そのプロセスを簡単に説明します。
- 空気の熱をくみ上げる。低温の冷媒(二酸化炭素)が大気から熱を吸収します。
- 圧縮してさらに高温化。コンプレッサーによって熱を高温・高圧に圧縮します。
- 水に熱を加えてお湯を作る。水加熱用の交換器でタンク内の水をお湯に変えます。
- 熱を吸収しやすい状態にするため、膨張弁で冷媒を低温・低圧に戻します。
- タンク内の高温のお湯に設定温度になるように水を混ぜて、浴室や台所、洗面所に給湯します。
火を使わないため、火災の心配がないのも大きな魅力であり、安全性の観点からもエコキュートは高く評価されています。
エコキュートにするメリット
電気代節約に役立つ
エコキュートを導入することで、夜間の安い電気プランを選ぶことができ、さらなるメリットが得られます。エコキュートは安価な夜間電力を利用して効率的にお湯を沸かすため、非常に省エネで電気代の節約が期待できます。
ガス給湯器のように火を使わないので火事の心配がない。
エコキュートは外気熱と電気を使用してお湯を作るため、火を使わず、火災のリスクを大幅に軽減することができます。
自治体によっては補助金が出るところもある。
災害時に安心。
万が一、電気や水道が停止してしまった場合でも、貯湯タンク内にお湯が蓄えられていれば、非常用水栓からお湯や水を取り出すことが可能です。
普段の生活の中で自然に利用できるシステムであり、突然の災害に対する備えにもなります。
一般的に、災害時のライフラインの復旧はガスよりも電気の方が早いとされているため、電気でお湯を沸かすエコキュートはガスに比べて安心だと言えるでしょう。
エコキュートのデメリット
初期費用が高額。
エコキュートは多様な種類があり、価格帯やグレードもさまざまですが、基本的には本体価格に加えて工事費が必要となります。相場としては、工事費込みで約35万〜60万円ほどが一般的です。
シャワーの水圧が弱くなる
ガス給湯器のシャワーとエコキュートのシャワーでは水圧に違いがあります。
ガス給湯器は水道圧力をそのまま利用できる水道直圧式で、ボイラーが瞬時に加熱してお湯を供給できるため高圧で使用できます。
対してエコキュートは貯湯式であり、水道圧のままタンクにお湯を貯めると、水圧に耐えられず故障する危険があります。そのため、一旦減圧弁で水圧を下げてからタンク内に給水する必要があります。
一般的な水道圧は500kPaですが、エコキュートではこの理由により水圧が170〜190kPaまで下げられてしまうのです。
強い水圧でシャワーを浴びたい方には物足りなく感じる可能性があります。
生活スタイルがあわなければ節約にならない
エコキュートは夜間の電気代が安くなるプランに加入し、夜間電力を利用することでお湯を作る仕組みで、これにより電気代が安くなるのですが、その分日中の電気代が高くなるため、昼間に在宅している家庭ではエアコンや調理などで電気を多く使うと、結局は高い電気代を支払うことになり、節約効果を感じられないことがあるかもしれません。
昼間は家を留守にし、夜間に多くの電気を使用する家が最も電気代のメリットを享受できるでしょう。
タンクの大きさによってためておいたお湯が足りなくなることもある。
タンクには貯められるお湯の限界があるため、家族の使用頻度や来客の多さなどの生活パターンをしっかり把握することが重要です。一日に何度もシャワーを利用する家庭や宿泊客が多い場合は、通常よりも多くのお湯を使う可能性がありますので、自分のライフスタイルに合ったサイズのタンクを選ぶことが解決策となります。
スペースが必要
エコキュートは敷地内に大きなタンクと室外機を設置するため、広いスペースが必須です。住宅密集地などでは敷地の広さによっては圧迫感を感じることもあるため、ヒートポンプと貯湯タンクをどのように配置するか事前にシミュレーションすることが望ましいです。
ヒートポンプと貯湯タンクは平置きで設置しなければならない。
タンクにお湯が満たされると、その重さは約500kgにも達しますので、地盤がしっかりした場所に設置しなければなりません。平らな基礎を作るために基礎工事が必要になることもあります。砂利の上にそのまま設置すると、地震などの自然災害で倒れたり傾く危険性があります。
ポンプが夜間に作動する音が気になる場合もある。
エコキュートは主に夜間に作動するため、大きな音ではありませんが、近隣の寝室近くで稼働させると苦情の原因になることも考えられます。
5~10年で交換
ヒートポンプの寿命は5年から10年程度。電子回路部品に故障が発生しやすいとされています。貯湯タンクの寿命は10年から15年程度。タンクはヒートポンプよりも長く使用可能ですが、定期的な水抜きなどのメンテナンスが必要です。メンテナンスを怠ると、寿命を短くしてしまう恐れがあります。
寿命が来た際には、本体代や交換工事費用が発生します。
交換にかかる費用は設置工事費込みで約40万〜50万円と見積もられます。
エコキュートの寿命を縮めてしまう行為
メーカーが推奨していない入浴剤を使う。(濁り系の入浴剤など)
メンテナンスを行わない
土地に適していないエコキュートの設置
一般地使用、寒冷地仕様、塩害地仕様など、土地に適した仕様を選ばないと、設置後すぐに故障してしまうことも考えられます。
自分の土地に合ったエコキュートを選ぶことが非常に重要です。
水質が適していないエコキュートの設置
井戸水や温泉水など、メーカーが推奨していない水質でエコキュートを使用すると、水のカルシウムなどの成分がつまりの原因となることがあります。
ヒートポンプのまわりにものを置く。
ヒートポンプは空気を吸い込んで圧縮し熱を生み出すため、周囲に物を置かない方が効率的です。ヒートポンプの周囲をクリアにしておくことが望ましいです。
まとめ
光熱費の高騰に対する対策として、また自然環境への配慮からもエコキュートは非常に注目されています。自然の力を最大限に活用し、災害にも備えることができる優れた設備と言えるでしょう。
ただし、初期投資は決して安くはありません。エコキュートが向いている家庭もあれば、そうでない家庭も存在します。そのため、住宅設備の導入に際しては、訪問販売で突然セールスマンが来ることもありますので、十分な注意が必要です。
セールストークに流されず、自身のライフスタイルにエコキュートを導入することで本当にメリットが得られるのか、冷静に考えてみてください。
導入を決める際には、販売店によって異なる値引き率やサービス内容があるため、複数の業者から見積もりを取得することを強くお勧めします。その際、設置工事費を含めた見積もりをもらうことで、値引き率を比較するのに役立ちます。
この記事がエコキュートの導入を検討する際の参考になれば幸いです。
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