日頃からお世話になっている方々に感謝の意を表し、心を込めて贈り物をする慣習と言えば、お歳暮やお中元が挙げられます。これらは日本に古くから受け継がれてきた季節の挨拶の一環であり、重要な文化です。しかし最近では、特に若い世代の中にはお中元を贈ったことがないという人も少なくないとのことです。
そのため、いざという時に迷わないためにも、今のうちにしっかりと理解しておくのが賢明です。
たとえば、贈る相手に不快感を与える可能性のある品物が存在することをご存知でしょうか。それを知っているか知らないかによって、相手に与える印象が大きく変わることがあります。
これから正しい贈り物の選び方について学んでいきましょう。
お歳暮とお中元の違い
お歳暮とお中元の違いは非常にシンプルです。
お中元は夏の期間に日頃の感謝の気持ちを込めて贈るものであり、お歳暮は一年間の感謝を込めて年末に贈るものです。基本的には、両方を贈ることが一般的とされています。
まずはこの二つの由来やその意味について詳しく見ていきましょう。
お歳暮について
お歳暮は、お正月に先祖の霊を迎えるためのお供え物を、相手に手渡す風習が始まりとされています。これは「御霊祭」と呼ばれ、数の子や餅、塩鮭などをお供えするものでした。
これが時代と共に変化し、現在の形のお歳暮へと進化していくのです。
お中元について
お中元は、中国の道教に由来する風習が発祥とされています。7月15日を「中元」と呼び、先祖の霊を供養する日とされていました。この風習が日本に伝わり、仏教における先祖供養の習慣と融合し、変化を遂げたと考えられています。
江戸時代に入ると、お盆の季節に贈り物を送る夏の挨拶としての文化が形成され、今に至るまで続いているのです。
買ってはいけない品物
・ハサミ等の刃物
ハサミや包丁などの刃物類は、日常生活で使う機会が多い品物ですが、贈り物としては避けた方が良いとされています。刃物は物を切る道具であり、そのため縁を断ち切るという連想を引き起こす可能性があるためです。このような理由から、贈り物には不適切とされています。
・靴下と下着
靴下や下着は、直接肌に触れる衣類であり、これらを贈るという行為は、相手に対して「着る物に困っている」や「見た目が醜い」といった意味合いを持たれる可能性があります。この意図がなくても、受け取る側によっては不快に思われる恐れがあるため、注意が必要です。
・靴やマット
履き物や敷物などは、贈り物として喜ばれそうですが、実は不適切な品物です。これらは「足で踏みつける」というイメージを連想させてしまいますので、贈られた目上の方に失礼な印象を与えることがあります。
・ハンカチ
ハンカチは贈り物として人気が高いアイテムですが、どうして不適切とされるのでしょうか。ハンカチは日本語で「手巾」と書き、「てぎれ」とも呼ばれます。この「てぎれ」が、縁を切るや絶交という意味に通じてしまうため、日頃の感謝の気持ちを表す品物としてはふさわしくありません。
・縁起が悪いと連想させる物
縁起が悪い物とは、死や苦しみを連想させるものを指します。例えば櫛(くし)は、「苦」や「死」という言葉を想起させてしまうのです。
ただの語呂合わせだと考えるかもしれませんが、特に気にされる高齢者の方もいらっしゃいますので注意が必要です。またお茶(茶葉)も弔事に使われるため、贈り物としては避けた方が良いでしょう。
・筆記用具と鞄
筆記用具を贈ることは、相手に「もっと勉強をしなさい」というメッセージを含むことになりかねません。また、鞄を贈る場合は、通勤を連想させるため、特に目上の方に贈ると失礼になる可能性があります。
・現金や商品券
金額が明確にわかる現金や商品券は、相手が喜ぶ品を選ぶ心遣いが感じられず、相手に低く見られてしまうことにつながります。一見すると、お互いにとって便利な贈り物のように思えますが、特に目上の方への贈り物としては、マナー違反になるため避けた方が無難です。
贈る際の時期
お歳暮
お歳暮は、一般的にお正月を迎える準備を始める12月13日から20日の間に贈るのが望ましいとされています。しかし最近では、年末の忙しさを避けるために、11月末から12月初旬頃に贈る人も多くなってきています。
ただし、生ものなどの食品を贈る場合は、お正月に近い日程で届ける方が良いとされています。
お中元
お中元を贈る時期は日本各地で異なります。
北海道では7月15日から8月15日の間、東北や関東地方では7月初旬から7月15日、東海、関西、中国、四国地方は7月中旬から8月15日、九州では8月1日から8月15日が一般的な時期です。沖縄では旧暦の7月15日(現在の暦では8月中旬から9月初旬)に贈るため、注意が必要です。
金額相場
贈り物の金額には明確な相場があるわけではありませんが、ある程度の目安は存在します。ただし、高価な物を選ぶことが必ずしも良いというわけではなく、相手にお返しの気遣いをさせることになり、逆に負担をかけてしまう場合もあるため、注意が必要です。以下を参考に、適切な金額を考えてみましょう。
お歳暮の場合
お歳暮にかける金額は、お中元よりも2、3割高くなる傾向があります。一般的には3000円から5000円程度の品物が選ばれることが多いです。また贈る相手によって金額が変わることもあります。例えば、友人や知人には3000円程度、お世話になっている上司や特別な関係の相手には5000円以上を贈るのが一般的です。
贈り物を選ぶ際には、無理をせず自分が負担にならない範囲での品を選ぶことが大切です。
お中元の場合
お中元に関しても、贈る相手によって金額が変わりますが、一般的な目安は3000円から5000円程度です。3000円程度であれば、知人や親戚、友人に贈るのにちょうど良い金額でしょう。
控えめな金額で、相手を思いやる品を選びましょう。5000円程度の品物は、職場の上司や目上の方、ビジネスパートナーに贈る際には適切です。また、特にお世話になった方には、1万円程度の品物を贈ることもあります。
お中元は毎年贈るものですので、昨年よりも低い金額の品物を贈ることは避けるようにしましょう。昨年と比べて低い額の品物を送ることは、マナー違反と見なされることがありますので注意が必要です。
贈る際に気をつけたいこと
相手が入院中
贈る相手が事故や病気で入院中の場合、贈り物が相手に届かないこともあります。また、食品などの生ものを贈る場合は、賞味期限にも気を付けなければなりません。
贈り物を配送する際には、相手が受け取れる日を確認した上で発送するのが望ましいです。直接お見舞いの品として持参するという選択肢もあります。
喪中の時
これは相手が喪中の場合だけでなく、自分自身が喪中である場合にも注意が必要です。特に四十九日の忌明け前は、贈り物を避けるべきです。
時期が7月15日以降であれば、「暑中御伺い」や「暑中御見舞い」と表現するのが適切です。
相手が長期不在
もし相手が海外にいることが分かっている場合は、贈る時期を変更し「残暑御見舞い」とするのが望ましいです。食品の場合は、賞味期限が切れた後に相手が受け取ることのないように配慮したいものです。
また、配送業者も多くの再配達をする羽目になるかもしれません。その結果、相手の家に不在票がたくさん残り、迷惑をかけることになってしまう可能性も考えられます。
相手が長期間不在であることがわかったら、連絡を取り、自分で引き取るようにしましょう。
贈ってはいけない人
日頃の感謝の意を伝えたいと思っても、お歳暮やお中元を受け取れない人々がいることを理解しておくことが大切です。
特に企業内では、従業員間での金品授受が禁止されている場合も多いため、贈る相手が勤務している会社のルールも確認しておく必要があります。
また、国会議員や裁判官、警察官などの公務員に対して金品を贈与することは法律で禁止されているため、十分に注意が必要です。贈った物を返却させる手間を与えることになるため、慎重になりましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。贈る際に注意すべき品物や時期、金額相場について詳しくお話ししてきました。意外と気を付けなければならないことが多いと感じた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、贈り物を通じて相手の喜ぶ顔を想像してみてください。どれだけ気持ちを込めて選んだ品物でも、知らなかったり配慮が足りなかったために相手に失礼だと受け取られたり、不快な思いをさせてしまったら、とても悲しいことです。
しっかりと確認し、感謝の気持ちが伝わる素敵な挨拶となるように心掛けましょう。
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